日光山輪王寺

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法話

晴耕雨読

 

 

晴耕雨読

輪王寺 執事長

今井昌英

 

 弥生(やよい)3月ともなると多くの参拝者で賑わう日光山内も、いつになく静まりかえっています。二社一寺の扉はいつもと変わらずに開いていますが、ウイルス感染抑制の要請を受け、輪王寺では法要や行事内容を変更せざるを得ない状況です。

 

 東日本大震災のときと同様、人々の活動停滞は物流や生産の困窮を引き起こし、マスクや消毒剤などの物資不足には、いかに我々の生活が目に見えない努力で支えられていたかという事実に気付かされます。しかも今回は、地球規模でそれが起こっています。

 

 9年前のあのとき「絆」(きずな)という言葉が注目されたように「宇宙の全ての事象は繋(つな)がり合っており、お互いに大切な存在、だからこそ助け合い、感謝しながら生きましょう」と仏教では教えます。

 

 ところが、今回は少し違います。正体がよくわからない目に見えない病原体が世界中に広まりつつある今日、なるべく外部との接触を避け、自宅待機や集会の自粛が呼びかけられています。私たちは今さらながらに移動や行動の自由の有り難さを思い知ることになりました。

 

 「晴耕雨読」(せいこううどく)という言葉があります。晴れの日は外に出て田畑を耕し、雨の日は家の中で本を読んだり思索にふけったり、という意味です。少々飛躍しますが、これを現在に当てはめれば、長い「雨読」の期間と考えられなくもありません。

 

 こういうときこそ心を落ち着け、普段出来なかった身辺の整理や、長編小説を読んだり、普段の行いを心で反芻(はんすう)したり、将来のことを思い描いたりする良い機会と捉(とら)えてみてはいかがでしょう?

 

 今から1200年前、比叡山を開かれた伝教大師「最澄」(さいちょう)上人は、「一隅(いちぐう)を照(て)らす」という言葉を遺されました。「今、自分が出来ることを精一杯つとめなさい」という教えです。今後もしばらく不要不急の外出を控える生活が続くことでしょう。それに耐えることもまた、広い意味で「一隅を照らす」行動に他なりません。

 

 いつの日か、今日のことを「あのとき」として振り返る時、少しでも悪い思い出としないためにも、「今このとき」を、いつも以上に大切に過ごしたいものです。

合 掌

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