日光山輪王寺

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法話

諸行無常(しょぎょうむじょう)

諸行無常(しょぎょうむじょう)

 

輪王寺執事長

今井昌英

 

 日光山の紅葉は、例年10月下旬にはじまり、113日の「文化の日」あたりにピークを迎えます。輪王寺の日本庭園「逍遥園(しょうようえん)」では、毎年その時期にライトアップを行っています。

 

 『裏を見せ、表を見せて散るモミジ』という良寛作と伝わる歌を思い起こすように、紅葉には、その美しさと裏腹に「寒くて暗い冬に向かって散りゆく、はかなく哀れなもの」という印象があります。

 

 ところが植物学の世界では、紅葉は新たな生命への準備で、次世代の命となる「種」に栄養を蓄えるための糖分が、葉を赤く染めるのだという説があります。ホットケーキに欠かせないメープルシロップは、そうした自然からの恩恵なのです。「紅葉」は決して死に行く姿ではなく、命の営みの姿なのだと気付きます。

 

 さて、今から2,500年前、インドのクシナガラで80歳の生涯を全うしたブッダ最後の言葉は「世の中は常にうつろいゆくものである、怠ることなく修行を完成なさい」というものでした。いわゆる「諸行無常」の教えです。平家物語の「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり」という下りから、とかく我々日本人は、諸行無常を「悲愴的世界観」で受け止めてしまいがちです。

 

 しかしよく考えてみれば、私たちの生きる宇宙も、137億年という気の遠くなるような時間の中で様々な流転生成を繰り返し、星ができ、生命が誕生し、今の私たちがいます。諸行無常の本来の世界観は、葉が散りゆくことで命を再生するモミジのように「ときに世界は壊れながら、常に新たなものが生まれ続けている」と捉えた方が良さそうです。

 

 長引くコロナ禍の中、私たちは未曾有の困難の中にいます。しかしながらこの世は諸行無常、この苦しみも永遠に続くわけでなく、辛くとも今を懸命に生きていれば、いつしか行く手を照らす光明が差し込んで来るに違いありません。

 

 それを信じて、これからはじまる紅葉シーズン、ちょっと立ち止まって色とりどりの葉を愛でながら、いろいろな思いを巡らせる。そのような心の余裕も、忘れずにいたいものです。

 

合掌

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