日光山輪王寺

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法話

祈 り の 力

祈 り の 力

輪王寺 総務部長

            鈴木常元

 

 人は、いずれ自分が死ぬということを知っている。その事実には抗えないということにも気づいている。人生は思い通りに運ばないなどということは、骨の髄まで思い知らされている。そして、知っていたからといって、それをどうすることもできない。人は全く無力である。

 

 人は祈る。自分が(人間が)無力であるということに感づいているから。

 世界は祈りに満ちている。今、この時にも、世界中のあちこちで祈りが捧げられている。「この戦争が早く終わりますように」「疫病の感染が収束しますように」「悪事を働いてしまった我が子が改心できますように」「誰もが幸せに暮らせますように」…。

 それでは、無力な人間は祈ることしか出来ないのか?

 否、人間は「祈ることが出来る」のである。人間には祈る力があったのだ。それも、自分ではない誰かのために。

 

 仏教では、祈りの終わりに必ず「回向(えこう)」をする。回向とは、この祈りによって得た功徳を自分だけのものとせず、善いことを自分のところで止めてしまわず、それが世界の隅々まで、全ての人に及びますようにと願うことである。

 

 祈りは「ご利益」を得るための手段とは違う。自分に都合の良い望みを叶えるための魔法でもない。死者を生き返らせるための儀式でもない。祈りは謙虚であり無私である。が、真摯な祈りには考えられないくらいの力がある。祈りの力を信じることである。人は自分ではない誰かのために祈るとき、「祈る」という行為そのものによって力を得るのだ。

 

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