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2023年05月01日法話

和合衆

WBC(『ワールド・ベースボール・クラシック』という野球の祭り)のこと

 

輪王寺 教化部長 鈴 木 常 元

 

 開幕戦の1回表、大谷翔平が先頭打者に投じた一球を、決勝戦の9回二死、世界最高の打者に投じた最後の一球、優勝を決めた世にも美しい軌道の一球へと、皆で繋いでいった2023年の『侍ジャパン』のことを知っていますか?

 知っていますか?どの試合でも彼らは、相手チームに心からの、最大級の敬意を払い、一所懸命戦ったことを。

監督・栗山英樹は、選手たちを信じて、信じて、信じ抜いて、どんなに不振を極めている選手がいても、一瞬たりともその選手の力を疑わなかったことを。

チームの中心・ダルビッシュ有が、誰よりも自分のことを後回しにしていたことを。

 出場機会に恵まれなかった選手らが、ベンチ内で嬉々としていたことを。グラウンドもベンチもスタッフも、ともに一所懸命戦っていたことを。

好漢ラーズ・ヌートバーも、手負いの名手・源田荘亮も、ムードメーカー・山川穂高も、誰もが皆、本当は孤独なプレーヤーなのだということを。

 

 知っていましたか?人間は、もちろん私も、あなたも、誰もが皆ちっぽけで、弱くて、狡くて、脆くて、怠け者で、傲慢で、ときに卑屈で、わがままで、身の程知らずで、驕り高ぶり、嫉妬深く、自己中心的で、ひとりよがりで、愚かで、無力で不完全な存在だということを。そして何よりも、人間は皆、孤独なのだということを。

 

 私は、人間は孤独で無力だが、どんな状況でも一所懸命になることができるのだということを、改めて知った。

 

 一所懸命だった『侍ジャパン』のメンバーは皆、孤独なプレーヤーであった。あの栄光は、孤独な魂の和合がもたらしたものであった。

孤独で無力な人間の、一人ひとりの一所懸命な力が和合したとき、不可能が可能になることがあるのだということを、知った。和合の力の量り知れないことを、和合の美しいことを、知った。

 

 私は、誰もが大谷翔平になることはできなくても、誰でも一所懸命になることはできるのだということを、一所懸命の美しいことを、改めて知った。

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