お知らせ

2026年01月01日法話

新春を迎えて

護摩堂執行 畠山慈朋

令和八年、謹んで新春のお慶びを申し上げます。                                                                             今年の干支は丙午(ひのえうま)です。江戸時代には、「丙午の女性は気性が激しく縁起が悪い、夫の命を縮める」などの迷信があったそうで、60年前の1966年出生数減少(出生率は戦後最低の1.58)もこの迷信が背景にあったそうです。もちろん科学的な根拠もなく、まったくのでたらめだそうですが、今日の少子化はもはやその迷信を超えた1.15(2024年)で、年間出生数は初めて70万人を下回る68万人、このままだと60万人を切る可能性さえあります。政府もこども家庭庁を設立し、様々な少子化対策を行ってきておりますが、歯止めがかかっていません。

新年早々、このような暗い話をするつもりはまったくなかったのですが、「丙午」呪縛にとらわれない世の中になって欲しいと切に願います。少子化対策として、高校までの教育費無償化など行っておりますが、果たしてどこまで効果があるものなのか。お金がかかるから子供を産めないという街頭インタビューをよく耳にしますが、果たしてそうなのでしょうか。お金がなくとも心の豊かさがあった昭和時代を、自分の経験からついつい回想してしまうのですが、子育て費用の負担感や仕事と育児の両立の難しさ等、様々な要因が複合的に絡み合い、以前はなかった新たな不安の種が時代の変遷とともに発生しているものと思われます。       

ただ少子化の背景には、その手前にある結婚に魅力を見いだせていないことが問題ではないかと感じています。独身生活は時間的・経済的制限が少なく気楽ですし、結婚によって今の生活レベルを変えたくない、相手がいる煩わしさは嫌だ、と考えるのは自然なことかもしれませんが、そういった価値観を重視し出産適齢期の結婚を望まない人も多いようです。個人の価値観を大切にする、それも個人の自由、生き方ではありますが、結婚によるデメリットよりもメリットにもっと目を向けて欲しいと思うのです。価値観がまったく同じ人間は、この世に誰一人と存在しません。結婚とは夫婦それぞれが背負ってきた文化の衝突であるとも言われますが、そこからかけがえのない喜びを得ることも忘れてはならなりません。相手の良い面も悪い面も受け入れ、時には助け合い、過ちを許し合い、辛いけれども運命の善し悪しまでも互いに乗り越えたときに、どれだけ相手が有難い存在かを再認識するものです。ふたりで経験する分、楽しいことは倍の喜びに、苦しみや悲しみは半分のつらさで済むのです。そして子供を授かることで、自らの命も顧みずすべてを捧げ、不惜身命の覚悟と決意をもつのです。屈託のない笑顔や、日々の些細な成長、社会で活躍する姿を見ることは、親にとってかけがえのない感動や達成感・幸福感をもたらすものです。

物理的に豊かになり価値観が多様化している現在、その生活レベルを下げることは容易ではなく、自分が大切にしたい価値観を求め邁進することも結構ですが、物理的な所有ではなく、豊かな人間関係や様々な経験、健康や心地よい日常生活などに豊かさを見出す視点を持つこと、“豊かさの本質”を見直すことが重要なのです。自分本位からいったん離れ、誰かのために費やす人生も、けっして悪くはないですよ。 

丙午の今年は、情熱と勢いが最高潮に達し、大きな飛躍や新しい挑戦によって進展・成長できる年と言われております。皆さまにとって、より良き一年になりますことを心よりお祈り申し上げます。

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